改善の兆し? それとも戦いはまだこれから?

Deutschlandfunkで、簡便な国際比較データ(ジョンズ・ホプキンス大学のデータをもとに作成されたもの;フランス、日本等は入っていない)がでています。

Coronavirus - Aktuelle Zahlen und Entwicklungen

 

1. 感染者数

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Die Entwicklung der Corona-Fallzahlen im internationalen Vergleich über 80 Tage (Deutschlandfunk/Andrea Kampmann)

最初の感染者100名をスタート地点にとり、その後の推移を表しています。

米国の感染者数が爆発的に増加し、スペイン、イタリア、ドイツ、そして英国が次々と中国の感染者総数を上回っているのがわかります。その一方で、中国と韓国は感染者数の抑え込みに成功していることがわかります。

 

2. 死者数

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Coronavirus: Entwicklung der Todesfälle im internationalen Vergleich (Deutschlandfunk/Andrea Kampmann)

最初の死者数10名からの推移です。

現状ではイタリア、スペイン、米国、英国の順に死者数が多くなっていますが、米国の死者数が急上昇しているのがわかります。ヨーロッパではドイツは比較的死者が少ないのですが、これは集中治療室の余力が比較的大きいことによるようです。

 

3. 致死率

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Coronavirus: Die Sterblichkeitsrate in verschiedenen Ländern über 43 Tage (Deutschlandfunk/Andrea Kampmann)

同じく最初の死者数10名からの推移。

米国の致死率が最初下がっているのは、政府が大規模な検査に踏み切ったからだそうです。検査数が増えれば致死率は下がります。ドイツも含め、欧米諸国で致死率が上昇傾向にあるのに対し、韓国では致死率の上昇はわずか、中国はほぼ横ばいとなっています。

 

4. 倍増時間

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Die Entwicklung der Verdopplungszeit des Coronavirus im internationalen Vergleich (Deutschlandfunk/Andrea Kampmann)

最初の感染者数100名からの推移です。倍増時間はここでは、感染者数が100名から200名、200名から400名、400名から800名…とそれぞれ倍増するのにかかる時間のことです。倍増時間が短ければ感染速度が高く(無秩序な感染)、長ければ感染速度が遅い(感染にブレーキがかかっている)ということになります。

欧米諸国はここでも軒並み倍増時間が短くなっていますが、徐々に長くなってきてはいます。中国、韓国は倍増時間が劇的に長くなっていますから、抑え込みに成功しつつあると言えそうです。

実際、報道されているように、中国・武漢では学校閉鎖、経済活動停止が、徐々に解除されています。

記事では次のことも指摘されています。

  • イタリアでは外出制限の効果が最初に現れ始めている(ロンドンのImperial Collegeの試算によれば、イタリアでは3月31日時点で8,200名の死者が記録されたが、何も対策を講じなければ死者は30,000人を超えていたであろう、とのこと)。
  • 倍増時間が中国、韓国に比べて依然として短いヨーロッパにおいても、状況は改善されつつある。ドイツにおいては、2日おきに感染者数が倍増していたが、4月8日時点では感染者倍増に10日ほどかかるペースに落ちてきている。

このような改善の兆しについて、ローベルト・コッホ研究所所長Lothar Wieler氏は「良い成果だ」と認めつつも、「パンデミックはまだはじまったばかりだ」と、警鐘を鳴らしています。

RKI-Präsident Wieler - "Die Leute dürfen das Coronavirus nicht unterschätzen"

以下、Wieler氏の主張を抜粋します。

  • 状況を判定するための指標は、①新たな感染者数、②既罹患者数(≒免疫保持者数)、③医療保健システムの罹患者受け入れ可能数、である。
  • ドイツの新たな感染者数が一日当たり7000名程度から4000名程度に抑えられてきていることは、外出制限の成果だとみてよい。
  • しかし、外出制限は一時的な施策であるし、病院での高齢者、医療従事者のクラスター感染も後を絶たないことに鑑みれば、新たな感染者数がいつ増加に転じてもおかしくはない。
  • 外出制限の緩和について検討・決定する際にはきわめて多くの関係者が関与しなければならない。「出口戦略」という場合の「出口」が感染拡大以前の状態への復帰を意味するとすれば、それは現時点ではあり得ない。段階的な緩和以外にはない。
  • 現下の外出制限をいつどの程度緩和するかは、ウイルスの潜伏期間と発病期間に依存する。潜伏期間が約2週間、(軽症の場合)発病期間が約1週間とすると、あわせて3週間必要となる。ドイツでは復活祭(今年は4月12日)までには制限解除を、という声も出ているが、外出制限の成果を確実に判定するためにはそれは不可能だ。
  • 基本再生産数(Basic reproduction number; R0 [0はnought=0(ゼロ)] R0=感染率/回復・隔離率;一人の感染者が非感染者何人に感染させる可能性があるかを表す数字)は当初3程度であったが、現在は1.3~1.5程度。しかし感染抑制のためには再生産数は1未満とならなければならない(現在はそうなっていないため、制限緩和には時期尚早)。
  • 慎重論の根拠は(一部で喧伝されているような)政治的なものではなく、純粋に生物学的なもので、新型コロナウイルスの増殖力・感染力がきわめて高いことだ。この数か月来の新参者、われわれがまさにその実態・病態の学習過程にあるこのウイルスについては、その増殖はともかく、感染については人為的に防げる。そのため、外出制限を初めとする抑制策が、この新参者が我々にかける負担をできるだけ減らすために不可欠となる。
  • そもそも我々の手元にある確実な手段は、対人接触を避けること、および基本的な衛生措置以外にはない(ワクチンも治療手段も開発されていない)ため、これらを徹底せざるを得ない。
  • 現状の厳しい外出制限は、成熟した市民としての自己決定権を損ねているとの見方や、また科学者が(不当に)政治的決定に影響を及ぼしているとの見方もあるが、科学者としては最良の知識と良心に基づいて情報提供を行い、施策の提言を行っていくほかない。