イスラエル政府の一貫した姿勢

父親がパレスチナ出身である米モデルのジジ・ハディッド(Gigi Hadid)のインスタグラム投稿に対し、イスラエル政府公式アカウント(Israel(@stateofisrael) • Instagram写真と動画)が激しい反論を行った。

パレスチナルーツのジジ・ハディッド、イスラエル非難は「反ユダヤではない」 声明に政府アカウント「あなたの言葉には何の価値もない」(1/2 ページ) - ねとらぼ (itmedia.co.jp)

概要については記事で簡潔にまとめられている。実際の投稿を見てみよう(出典:Gigi Hadid(@gigihadid) • Instagram写真と動画)。

この投稿(10月10日付)でハディッドは、「罪のない人びとに対するテロ行為(terrorizing)は、『自由パレスチナ』運動と両立しないし、これに利益を与えるものでもなく、復讐の連鎖にさらに火をつけ、親パレスチナは反ユダヤ的だ、という間違った考えを永続化させるだけだ」と述べている。これは、ハマスによるイスラエル市民に対するテロ行為を明確に批判したものと理解できる(イスラエルによる報復攻撃を指して、それをここで罪のない人びとに対するterrorizingと表現していると考えることはできない)。

だが、本人による別の「ストーリーズ」への投稿では、「親パレスチナ≠親ハマス」「反イスラエル政府≠反ユダヤ」という面を強調している。これがイスラエル政府の反論を誘発した(Have you been sleeping the past week Gigi? Or are you just fine turning a blind eye to Jewish babies being butchered in their homes? Your… | Instagram)。

※以下の画像も参照。出典:Gigi Hadid posts in support of Palestinians, as Israeli government addresses her directly | The Independent  State of Israel vs Gigi Hadid: 'Have you been sleeping in the last week?' (ynetnews.com)

イスラエル政府公式アカウントは、「ハマスによるイスラエル人に対する虐殺には微塵の正当性もない。ハマス糾弾は反パレスチナではないし、イスラエルによるテロリスト掃討を支持することは正当である」と述べている。これにさらに、凄惨な殺戮の現場の画像とともに、「これを非難しないならばあなたの言葉は無意味だ」と厳しい糾弾が続く。

上記のようにハディッドは、ハマスを名指しはしないまでも、そのテロ行為を明確に批判していた。「親パレスチナ≠親ハマス」「反イスラエル政府≠反ユダヤ」のストーリーズ投稿だけを見ると、ハディッドがハマスのテロ行為には沈黙しているように見えるが、それは彼女の真意ではない。もっとも、ハディッドが簡潔で目につきやすいストーリーズ投稿でハマスのテロ行為に触れなかったのは事実なので、これをイスラエル政府公式アカウントが批判のターゲットとしたのも無理はない。

本ブログの別の投稿(グテーレス国連事務総長の声明 - encyclios disciplina (hatenablog.com))でも指摘した通り、イスラエル政府はユダヤ人に対するハマスによる今回の虐殺(massacre)を、ユダヤ人およびユダヤ国家の存続にかかわる、ホロコーストにも匹敵する事態と捉えている。したがって、今回の虐殺に触れなかったり、あるいは単なる「攻撃(attack)」などのような無害化させた表現を行うことに対し、最も強い言葉で批判する。これはイスラエル政府のこの間の首尾一貫した姿勢で、国連の高官であろうと、特定の出自・政治的背景を持つタレントであろうと、発信に影響力をもつ相手であればまったく変わらない。

 

ג'יג'י חדיד