「国際社会の法の支配」に関して求められる日本のコミットメント

いちはやく出された篠田英朗氏の論考。

ハマスの「イスラエル攻撃」で泥沼の構図に引きずりこまれた欧米諸国と「日本の取るべき立場」(篠田 英朗) | マネー現代 | 講談社 (gendai.media)

末尾の次の提言が傾聴に値する。

ロシアのウクライナ全面侵攻以来、岸田首相をはじめとする政権高官は、「国際社会の法の支配」の重要性を訴えてきている。イスラエルパレスチナ問題に接しては、「国際社会の法の支配」を言うことを控える、というのは、全く望ましくない。あるいは欧米諸国の建設的な関与を引き出すためにも、実際のところカギとなるのは、「国際社会の法の支配」だ。

蛮行に対抗して市民を保護するための「イスラエル自衛権の行使」については、支持や理解を表明していい。他方、その自衛権の濫用を少しでも予防するため「国際人道法にのっとった武力行使」の重要性を愚直に訴えていくべきだハマスだけでなくイスラエル戦争犯罪行為も、指摘あるいは糾弾していかなければならない。またイスラエルの占領が国際法違反であることも、繰り返しあらためて確認してよい。欧米諸国にも、できるだけその方向性で協調してもらえるように、働きかけるべきだ。

現状でいきなり中東和平のようなものを訴えるというよりは、ガザ住民のための人道回廊の設置や、人道援助機関のアクセスの確保などの具体的な課題に言及して、真剣さを見せたい。しかも「文民の保護」という国際社会で普遍性を持つ規範に訴えていきながら、主張していきたい。

混迷する中東情勢に、明確な座標軸がないように感じられるだろう。しかし前に進むための手がかりは、自らが標榜しているはずの「国際社会の法の支配」にこそある。

(強調は引用者)