利権による停戦圧力?

以下の記事のYahoo版コメント欄には、ロシアの迷走はワグネル反乱からではなく、クリミア併合からだ、とあった。だが反乱が転機となるのは間違いないように思える。

プリゴジン「反乱」で、ロシアは反撃の大チャンスを失った...見えてきたウクライナ「終戦」の形とは|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト (newsweekjapan.jp)

記事では備忘録的に、戦争勃発に際して重要な役割を果たしたとされるアクターとして、

  • 東部ウクライナの経済利権の維持・獲得を目指すウクライナ・ロシア両国のオリガルヒ
  • (現政権も含めて)歴代政権の対ロシア関係強化策をはばんできたウクライナ過激右派勢力

があらためて指摘されている。ここに米国「ネオコン」勢力が絡めば、たしかに(少なくともロシアサイドからは)一触即発と受け止められても仕方がない面はある。もちろん、親ロシア派、もしくはロシア系住民の弾圧が実際にあったとしても、既存の国境を越えて、あるいは一方的な国境変更という荒業をもって、正当防衛を開戦事由として持ち出すことに正当性は見出せない。

ワグネル反乱の転機としての意味は、戦争大義を正面から疑ってかかったプリゴジンがいまだ延命されているということ、および彼が解任を要求したショイグ、ゲラシモフも続投していることから読み取れる。ロシアが分裂しているとの印象を与えず、なおかつ利用できるところはすべて利用する、という方針だろうと推察される。

ポイントは、戦争大義についても戦争目的についても異なる見解をもつ当事者が、「一つの」国家主権のもとで、しかもそれぞれにかなりタイプの異なる愛国主義を掲げて戦争遂行に当たっている点である(歴史マニアの妄想的愛国主義と、国民サイドの直情的愛国主義、とでも名付けておこう)。

ここに上記の経済利権、軍事利権が絡むことで、停戦圧力が強まってくるかもしれない。一枚岩になれるだけの大義はない。とすれば、あとは利権の確保が行動指針となるはずである。破壊が続けば、当然利権は消失するだけなので、それを食い止める圧力が国内外の諸勢力から出てくるか否か、がカギである。