ボリス・ボンダレフ氏の「プロフェッショナリズム」

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ロシア外交官が辞職 ウクライナ侵攻を痛烈批判 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

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ボリス・ボンダレフ氏はロシアの国連代表部に勤務してきた外交官。今回のロシアの「特別軍事作戦」に反対の意を表明して辞職し、これを「侵略戦争(agressive war)」にして「ウクライナ人だけでなくロシア人に対しても戦争犯罪」であると表明した。

Boris Bondarev - Wikipedia

彼の声明文が公開されている。

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上記産経記事の「露外務省が年々、専門性を失い、宣伝機関に堕してきた」のくだりであるが、原文では「この20年、外務省の嘘と素人仕事(unprofessionalism)の度合いが絶えず増大してきた」、「偏らない情報、公平な分析、冷静な予測にかわって、1930年代のソビエトの新聞に見られたようなプロパガンダの常套句がまかりとおっている」と指摘されている。

ラブロフ外相への非難は峻烈を極める。「かつて彼は教養と専門性を備えた知識人(a professional and educated intellectual)として同僚外交官の高い評価を受けていた。その彼がこの18年ほどでお騒がせ矛盾した発言ばかりを連発し、世界を(当然ロシアをも)核で脅す人物となってしまったのだ。」

ロシア外務省はもはや外交機能を失い、戦争挑発、嘘、憎悪の宣伝機関と化し、ごく少数の者の権力維持(およびそのためにもたらされるロシア人、ウクライナ人の幾多の犠牲)にのみ奉仕し、したがってロシアのさらなる劣化と孤立(裸の王様化)を招いているとも。ボンダレフ氏はこの声明文を、かつて希望に満ちてロシア外務省に入り、外務省を「家庭、家族」のように思ってきたが、もはやこの血にまみれた愚かな屈辱を共有することはできない、と結んでいる。

ここでボンダレフ氏が指摘するunprofessionalism、まさにいまのロシア政治・外交・軍事に見られる反知性主義の核心部をついているように思われるのだが、同じ言葉を用いて、侵攻開始前の1月31日、レオニド・イヴァショフ退役上級大将が「権力と統治の質低下・素人集団化」の問題こそロシアの抱える最大の問題だ(隣国の脅威は差し迫ったものではなく、あるとしても作られた脅威に過ぎない)と指摘していた。

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ボンダレフ氏の指摘する「『Z』の文字でかき消されるロシアにおける自由な社会への希望」を取り戻すための第一歩は、かつてラブロフ外相も有していたとされる「専門性(professionalism)」に立ち戻り、「偏らない情報、公平な分析、冷静な予測」という、外務省本来の機能を回復させることだ、ということになるであろう。

テレビ朝日ニュース)

「戦争に反対だ」ロシア外交官が異例の“抗議辞任” プーチン氏を猛批判|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト (tv-asahi.co.jp)