「集団免疫」についてのメモ

ワクチンも治療薬もない状況の下、日本政府は集団免疫策を採用していない、と。公式見解としては当然でしょう。一人の犠牲でも容認する政策はあり得ません。

www.sankei.com

しかし、日本の新型コロナ致死率の低さが何を意味するのか、専門家はさまざまな意見を述べていますが、ウイルスの毒性が弱い段階で多くの国民が感染し、無症状のまま集団免疫を「すでに」獲得した、との見方もあります。

【緊急企画 新型コロナを正しく恐れる】#32

 先月30日付の東京新聞朝刊に、都内のクリニックが希望者200人を対象に抗体検査を実施したところ、陽性率が5・9%(一般市民4・8%、医療従事者9・1%)だったという記事が掲載された。

 東京都の人口は約1400万人。このデータを当てはめると、一般市民に限っても、約70万人がすでに感染していた計算だ。一方、同29日時点での新型コロナウイルス感染症による都民の犠牲者は117人。致死率は0・016%となる。季節性インフルエンザの致死率は0・1%程度といわれているので、新型コロナは、感染症としては、むしろマイルドな部類に入ってしまう。

 厚労省が公表している「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」(4月30日版)の数字で計算すると、致死率はイタリアが13・6%、イギリスが15・8%などとなる。なぜ、日本とこれほどの違いが生じてしまったのか。

 さまざまな説明が試みられている。PCR検査数が極端に少ないから、という説。別の死因で片付けられている人が大勢いるのでは、と疑われている。BCG(結核ワクチン)の接種率の違いという説もある。接種率が高い国ほど新型コロナの被害が少ないといわれている。また肥満が原因となる糖尿病や高血圧といった慢性疾患は新型コロナの重症化リスクであることが知られている。実際、欧米では肥満の人は集中治療室に入院するリスクが高いという。肥満度(BMI>30)を比較すると、アメリカ37・3%、イギリス29・5%、イタリア22・9%など。一方、日本人はわずか4・4%だ。

 日本人はすでに集団免疫を獲得している、という仮説も出ている。中国・武漢謎の肺炎が発生したのが昨年11月下旬。しかしほとんど無警戒のまま、同12月には71万人、今年1月には92万人もの中国人が来日した。状況が悪化した同2月になっても、まだ9万人近い中国人が入国していた。

 そのとき日本人の多くが感染したが、まだウイルスの毒性が弱かったため、ほとんど無症状のまま免疫を獲得したというのである。しかし同じ時期、ヨーロッパにも中国人観光客が押し寄せていた。それに集団免疫というからには、一般市民の抗体陽性率が、もっと高く出てもよさそうだ。それを確認するためにも、広範な抗体検査を早く実施するべきである。

長浜バイオ大学医療情報学・永田宏教授)

headlines.yahoo.co.jp

インフルエンザと新型コロナウイルス感染症とは「競合関係」にある(一方が流行すればもう一方は流行しなくなる; インフルエンザが流行した集団は、新型コロナウイルス感染症にある程度の免疫がある )との仮説も提起されています。

https://www.snbl.co.jp/cms/wp-content/uploads/2020/05/Release20200430_PDF.pdf

経済を止めたままでは、今度は病気以外の理由による犠牲を拡大させる。だから検査・隔離・治療体制を整備し、ソーシャルディスタンスを継続しながら、徐々に経済活動を再開すべきだ(そのためには、公には言えないけれど、集団免疫の発想は不可避だ)、との主張は正論ではないでしょうか。

gendai.ismedia.jp

集団免疫策の「本家本元」(?)、スウェーデンのケースはどうでしょうか。

死者数が実数、人口比いずれで見ても北欧近隣諸国に比べ大きな値で推移しているようですが、都市封鎖を行わない姿勢を崩していません。

www.newsweekjapan.jp

とはいえ、「3月17日以降、高校・大学を休校としているほか、50名以上の集会禁止、不要不急の旅行の禁止、70歳以上の高齢者の公共交通機関の利用禁止、小売店やショッピングモールへの入店者数の制限といった措置を講じている」とのことで、日本の「自粛要請」とそう変わらないようにも見えます。

死亡率は12%超。感染者が1000人を超える国の中で7番目に高い割合を占めています(5/7時点)。

www.statista.com

もっとも、田中宇氏は「感染者も死者も基準が国によってまちまちで、もともとこの手の計算自体に意味がな」く、「スウェーデンの統計上の「感染者数」は、入院している患者数もしくは重症者数と思われる。重症者の致死率が12%というのは自然だ」と述べています。

tanakanews.com

北欧に限定せず、都市封鎖を行っている他のヨーロッパ諸国と比べれば、「人口100万人あたりのスウェーデンのコロナ死者数は265人[補足;5/7時点298人]で、都市閉鎖をやっている他の欧州諸国と大差ない。ベルギー677[5/7時点736人]、スペイン540[5/7時点557人]、イタリア478[5/7時点495人]、英国419[5/7時点460人]、フランス381[5/7時点387人]など、都市封鎖をやっているのに百万人あたり死者数がスウェーデンより多い欧州諸国がたくさんある」ということで、少なくとも、(医療福祉体制の充実度など―これは決定的に重要なのですが―を度外視すれば)「都市封鎖」と(いわゆる)「集団免疫」策とで根本的な差があるとは言えないのかもしれません。

とはいえ、(死亡理由などをめぐって数字の操作があったとしても)「米国、中国の2倍超の死亡率」と言われれば、「集団免疫なんてあり得ない」という声が聞かれるのももっともなことです。

www.newsweekjapan.jp