「世界で二番目に古い職業」の行く末

傭兵は現代に至るまで、ロシア、中国、さらには米国でも暗躍してきたとのことだが、この、前線の肉弾戦に駆り立てられながら公式な戦死者にすらカウントされない「汚れ役」を、正規軍に吸収合併することを試みたことの意図は何だったのだろうか。

武装反乱後も影響力を保持? ロシアの「政商」プリゴジン氏はなぜ“粛清”されないのか? | 集英社オンライン | 毎日が、あたらしい (shueisha.online)

傭兵と正規軍(志願兵+徴兵)の緊張関係が、一瞬ではあるが表面化したのがワグネル反乱であった。指揮命令系統の統一という表向きの意図だけでなく、国防省幹部自身も保有するとされる傭兵組織との利害関係も背景にはあるだろう。

ワグネルの組織原理が「国益第一、利益第二」と評されることがあるようだが、もちろんこれを文字通りに受け取るわけにはいかない。とはいえ、ロシアの戦争の根っこに何があるのかという点を考えるうえで、傭兵と正規軍との緊張関係という、歴史の根幹にもかかわる部分を見逃すわけにはいかない。

そして、国の掲げる戦争大義国民感情にとって「空振り」に終りかねないとき、多大の「名もなき」犠牲を捧げる傭兵の「別の大義」が国民に一定の支持を得る可能性があることを、ワグネル反乱は一瞬だけ示したと言えるだろう。

この緊張関係のなかを、ロシアがもうしばらく動いていくという見立てが、ロシアの国内事情と戦争の行方に別の光を当てるのかもしれない。