「集団免疫新説」について

S(Sakigake)型、K(Kakeru)型、G(Global)型の少なくとも3種類の型のウイルスのうち、早期の国境封鎖によりS型のみを「受け入れた」欧米では、G型の増殖と過剰な免疫反応(抗体依存性免疫増強(ADE))により多くの重症化ケースを招いたのに対し、入国制限が比較的遅くかつ緩やかだったためにS、K両型を「受け入れた」日本などアジア諸国では、とくにK型によるG型への免疫効果が効いたのではないか、との説の紹介。

diamond.jp

元が英語論文のため、日本語での詳細な学説紹介はありがたいのですが、それに続く「学説の政治的意味」の解説は(学説そのものの「異端」性もあいまって)ちょっと同意しがたいものがあります。

科学の成果を政治判断にいかに反映させるか、は重い課題です。リスク最少化のために最大限の安全策をとることは、科学的成果とは別に政治判断として求められることではないでしょうか。その意味で、「経済の停滞を避けるには、財政拡張政策を継続すると同時に、大規模な検査を実施できる能力を確立し、陽性者を隔離して陰性者の不安感を払しょくすることが不可欠である」という主張を、「素人の思い付きのレベル」と断じるのはいかがなものかと思います。

もっとも、「集団免疫を獲得する機会を得られなかった病院内で感染リスクが高く、「院内感染」対策が最重要」との(研究報告での)指摘は、きわめて重要です。

また、抗体キットのカットオフ(陰性・陽性の境)を低く設定した場合、抗体値の高低に個人差があるために、実際には抗体を持っているのにそう判定されないことが起こり得るということを念頭におきながら、G型への抗体だけでなく、K型への抗体も調べなければならない、との(これも研究報告での)指摘も重要です。