「新しい平和」の再構築
「新しい平和」とは、かつて常態化していた「戦争の一次的不在」ではなく、いわば「永遠平和」である。
歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリが警鐘を鳴らす「『新しい平和』の終焉」 | 自国を守りたいなら他国と協調せよ | クーリエ・ジャポン (courrier.jp)
ドイツと日本のミリタリズムを木端微塵に破壊した第二次世界大戦後それが本格的に始まり、21世紀初頭安定軌道に入りかけていた矢先に、時間軸を押し戻す結果をもたらしたのがロシアによるウクライナ侵攻である。
「新しい平和」の要件は、①技術進歩による戦争抑止効果、②資源から知識集約産業への経済構造の転換、③非好戦的文化の広がりとリベラルな国際秩序、であるとされる。
とりわけ③の脆弱性があらわになったのが、ここ最近の右派ポピュリズムであるという。徐々に掘り崩されていたリベラルな国際秩序が、ウクライナ侵攻によって一挙に瓦解しようとしている。
すでに私たちはロシアのウクライナ侵攻を受けて、ドイツのような国が一夜にして国防予算を大幅に引き上げ、スウェーデンのような国が徴兵制を復活させたのを目撃した。教師、看護師、ソーシャルワーカーのために使われるべきお金が、戦車、ミサイル、サイバー兵器に振り向けられるのだ。世界中の若者は18歳になれば徴兵される。世界中がロシアのような、過剰な軍隊と人手不足の病院を抱える国となる。戦争と貧困と病気の新しい時代が到来する。
だが、私たちはいま、長く続いた平和の価値を再認識しつつある。戦争と貧困という野蛮な過去に戻るわけにはいかない。ハラリが言うように、時代錯誤のミリタリストに抗して、国と国、人と人が向き合う基盤としての平和でリベラルな国際秩序を死守しなければならない。
※ なお、上記③の非好戦的文化の広がりとリベラルな国際秩序は別項目とすべきだろう。そのうえで、ラセットとオニールの「平和の三角形」にもある民主主義(ないしは非権威主義的政体)を加えるべきではないか。
(平和の5要件)
①技術進歩による戦争抑止効果
②資源から知識集約産業への経済構造の転換
③非好戦的文化の広がり
④リベラルな国際秩序
⑤非権威主義的政体
「非好戦的」であって「反戦的」「平和主義的」でないところ、および「非権威主義的」であって「自由主義的」「民主主義的」ではないところがポイントである。軍事力(同盟や相対的軍事力;高橋洋一の平和の五要件:中国の戦争: 随時想録 (cocolog-nifty.com) 高橋洋一の平和の五要件ーその2: 随時想録 (cocolog-nifty.com))を否定しないし、また「西側」イデオロギーの正当性を押しつけるのでもない。ただ、軍事力一辺倒(貧困や病気の軽視)ならびに権力の過度の集中(民意の軽視)を否定するのである。