【思想史・制度史研究会(地域文化研究会)】第1回 制度論と国家・自治体/フェアトレード

「思想史・制度史研究会(地域文化研究会)」第1回研究会を開催しました。
以下、簡単に報告します(研究会の趣旨・方針等については後日あらためて報告します)。
 
開催日時:2021年3月22日(月)13:30~15:30(Zoomによるオンライン開催)
 
1.「制度」と「国家」に関する私論の紹介
大野悠介氏(下関市立大学公法学
 
(概要)
 フランスの法理論家、モーリス・オーリウの制度論から「理念のもとに力を組織化した事業体」という構想を、国家・自治体のとらえ方に応用する試みが紹介されました。ここでは国家は理念実現を目的とする「場」としてとらえられ、政府(国民をふくむ)と住民が、あるいは中央政府地方自治体が、それぞれ法的地位を異にする独立したアクターとして理解されます
 これに基づいて、市場なら市場、環境なら環境という異なる「事業体」の理念に沿って、アクターが協同して理念の実現を目指すという見方が提起されました(その理念を逸脱する場合、「権限逸脱」ないし「違法」とみなされます)。さらにこの観点から、種苗法改正、環境保護フェアトレードについてどのような見方が可能となるかについて説明されました。
 質疑応答では、違法行為の解釈といった理論的内容から、環境保護の実務面のとらえ方に至るまで、広範な質問が提起されました。
 
 
2.フェアトレードと地域社会
長濱幸一氏(下関市立大学/西洋経済史)
 
(概要)
 最初に、フェアトレードの定義(「貧困のない公正な社会をつくるための、対話と透明性、 互いの敬意に基づいた貿易のパートナーシップ」)、フェアトレードの国際団体による価格設定や取引の公正性確保の取り組み、フェアトレード認定商品の基準(経済的、社会的、環境的)、世界のフェアトレード商品市場の動向、といったフェアトレードについての概説がなされました。
 これに続いて、日本国内におけるフェアトレードシティの試み(熊本、名古屋、札幌など)、日本独自のフェアトレードシティ認定基準(地域活性化につながっているかどうか)、フェアトレード大学の試み(中国地方にはFTSN; Fair Trade Student Networkの支部がないなか、下関市立大学学生有志団体 WSK - ホーム | Facebookの学生がその活動を評価されて2021年度のFTSN全国代表に選出されたことなど)について報告されたのち、下関での今後の可能性について、地元の水産業や農業、地元商店街との連携により、さまざまな展開が考えられるとの提案がありました。
 質疑応答では、長府や唐戸などの商店街での展開が可能、今後の政策としてぜひ取り入れてみては、等の提案がありました。また、公正な価格設定と市場原理との関連など、理論的な面での問題提起もありました。