アブラハム合意
2020年の8月から9月にかけて、アメリカ(トランプ政権)の仲介により、イスラエル、アラブ首長国連邦、バーレーンが平和条約を締結したが、これを関係国に共通する「アブラハムの宗教」(ユダヤ教、キリスト教、イスラーム)に因んでアブラハム合意(Abraham Accords)と呼ぶ。
The Abraham Accords - United States Department of State
旧約聖書ではわずかしか触れられていないため、わかりにくくなっているが、ユダヤ教、イスラームの伝統のなかでは、高齢になるまで子に恵まれなかったアブラハムが(妻のサラが連れてきた)女奴隷のハガルに産ませたイシュマエルは、アラブ人の始祖とされている。
このアブラハム合意、「宗教の自由を含む人間の尊厳と自由の尊重。相互理解と共存に基づく、中東と世界の平和の維持と強化の重要性を認識する」「「アブラハムの宗教」と全人類の平和の文化を広めるため、宗教・異文化対話の促進を努力する」など、(レッシングの『賢者ナータン』をも連想させる)きわめて理念的な内容を含んでいる。この合意のもつ政治外交上の重要性にあらためて注目を促す記事。
アブラハム合意はエジプト、ヨルダンに続くイスラエルの平和条約だが、これは筆者によれば、米国と協調可能でイランやイスラーム原理主義諸勢力を抑制する穏健なアラブ諸国ブロック(pro-American bloc that includes Egypt, Israel, moderate Arab countries and Saudi Arabia, which could counterbalance Iran and fight the global threat of radical Islam)の要石だという。
このアブラハム合意を中心とするアラブ諸国のイスラエルとの連帯が水泡に帰す危険性があるという意味でも、イスラエルによるガザ地区への全面侵攻は避けるべきだ、としている。