小国主導の国際秩序へ

毎日新聞社説。

社説:’22平和考 アジア安定と日本 「米中」に埋没せぬ戦略を | 毎日新聞 (mainichi.jp)

米か中か、という二者択一をASEAN諸国は望まない。小規模国であっても自立した通商・外交関係のなかで繁栄を勝ち取りたいと多くのアジア諸国が考えている。日本も「全方位」の外交により、二者択一を嫌うアジア諸国と共同歩調をとっていくべきだとの趣旨。正論であろう。

ちなみに同日の特集記事では、ウクライナ問題に関し、「即時停戦は(チェチェンジョージアなどの例に見られる通り)ロシアの場合、妥協した側に多大な犠牲を強いるのは避けられない。侵攻前の状態にロシア軍を押し戻してから停戦交渉に着手したいという方針のウクライナの自決権行使に、外部から口出しすべきではない」「日本は太平洋戦争の体験から軍への不信感が他国に比べてひときわ強く、軍事力による解決を極端に嫌う傾向がある〔この傾向は是正すべきものだ〕」との趣旨の専門家の意見が紹介されていた。

世界経済・国内経済をひっ迫させての紛争長期化。(第三者流出を招きかねない)大量の武器援助に頼りきりの「自衛戦争」。こうした根本問題への処方箋はここには見当たらない。同一紙面の同日記事と思えない「多様性」。

別の観点から上記社説と同趣旨の意見が出ている。

Mehr Verantwortung würde heissen, sich für einen dauerhaften und gerechten Frieden auf der Grundlage der internationalen Bestimmungen einzusetzen und nicht das Völkerrecht zu eigenen Gunsten ­auszulegen. Wenn Europa sich vom US-amerikanischen Kriegskurs befreien würde, müssten auch die USA ihre Strategie ändern. 

(より多くの責任を負うとは、国際法に基づいて恒久的かつ公正な平和のために働き、国際法を自分に有利に解釈しないことを意味します。 欧州が米国の戦争路線から自由になるとすれば、米国も戦略を変更しなければならないだろう。)

Nr. 14 vom 16. August 2022 - Zeitgeschehen im Fokus (zeitgeschehen-im-fokus.ch)

大国が単独で国際法の権威的解釈者となることは(少なくとも今後の世界では)あり得ない(筆者デ・ゼイヤスによれば、NATOの東方拡大とこのたびのベロシ訪台はそれぞれ軍事的挑発、ニクソンの「一つの中国」原則に反する内政干渉であり、ともに国際法違反である)。アジア諸国が特定の大国に追随しないのと同様に、欧州諸国も米国への追随を改めることで、国際関係が多様化され、多様化された国際秩序に大国を巻き込み、その際大国のワンマンプレーを控えさせるという流れが想定されよう。その意味で先の社説の次の指摘は勘所を突いている。

 日本やASEANなどによって地域の経済連携が深まれば、内向きに傾く米中も無視できない。実際に中国は環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に加入申請し、米国もインド太平洋経済枠組み(IPEF)を立ち上げた。

 日本はこうした枠組みを共有している。それをテコにして大国に建設的な行動を促さなければならない。

 地域の安定のためには日中が是々非々で対話することが欠かせない。今年は国交正常化50年の節目でもある。違いを認め、共通利益を追求することが両国関係の基礎のはずだ。

 大国の争いに埋没しないための戦略を描かねばならない。