コロナウイルスと文明

新型コロナウイルス感染症を文明史的な観点から大きくとらえる試みが出てきています。そのなかの一つ。

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短期間の拡大の理由として、1)ウイルス要因(ヒト細胞に「くっつきやすい」)、2)宿主要因(人生100年時代の慢性疾患・治療薬による免疫低下)、3)環境要因(人と人の往来の増加;これは「ヒト」にとっての「自然環境」というよりはむしろ、ウイルスにとっての「環境」の好条件ですね)が挙げられています。

第二の「宿主要因」は、まさしく医療の発展、健康長寿社会がウイルスを「呼び込んだ」という側面があることを指摘しています。

その「証拠」ではありませんが、アフリカで感染が拡がっていないことの背景には、きわめてわかりやすい事実として、「若者が多い」ということがあります。

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「若者が多い」、というだけでは不正確で、「出生率が高いため若者が多く、平均寿命が低いため高齢者が少ない」と言うべきでしょう。それはともかく、いまのところ(ブラジル等を除いて、また「秋冬の感染拡大」が懸念されることはあるにせよ)南半球の状況が比較的落ち着いているのに対し、北半球の(高齢化の進んだ)先進各国で被害が拡大しているのはきわめて象徴的です。

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アフリカに関する記事の中で、ナイジェリア、南アフリカでは非常に厳しい移動制限・国境封鎖が感染拡大を阻止した半面、やはり移動制限による経済への打撃が懸念されると書かれています。

たしかに直近の経済先行きは心配ですが、これもやはり長期的視野でとらえていくべきでしょう。「文明」の発展による「環境」への負荷が、このたびの、あるいは類似のウイルスを人間社会に「呼び込んでいる」という点に鑑みると、「自然から文明へ」という流れを「文明から自然へ」という流れに転換すること、具体的には(長崎大の山本太郎教授が指摘するように)「生態系の多様性や野生動物の生存の確保」や大都市への人口集中の緩和、経済格差の是正が喫緊の課題となってくると思われます。

 

(参考)こうした文明史的観点からの書評・報道を展開している最近の(地元)長周新聞の記事から:

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種苗法関連の記事も要注目です:

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